生物資源学科

昆虫学研究室

Laboratory of Entomology

昆虫を知り、農業を知る

上船雅義 教授上船雅義 教授

武藤将道 助教武藤将道 助教

研究内容

1. 昆虫類の小さな卵の中で起こる胚発生過程を厳密に追跡し、比較検討を通して各群の本質的な特徴(グラウンドプラン)を把握、そしてこれらのデータと論考に基づき、昆虫類の進化の過程を描き出すという、比較発生学的な立場からの研究を行っています。

2.寄生蜂や捕食者を使った生物的防除に取り組んでいます。害虫防除のため、野外で寄生蜂や捕食者を呼び寄せ圃場に定着させる技術や、植物の香りで害虫を忌避する研究を行っています。

研究室だより

水生昆虫談話会第 508 回例会@岐阜大学位山演習林(2024 年 9 月 22 – 23 日)岐阜大学位山演習林で行われた水生昆虫談話会第 508 回例会の様子を紹介します。水生昆虫談話会とは、関東地方を中心として、水生昆虫に興味を持つ人たちが月に 1 度集まって情報交換や研究活動の発展を目的として活動している会で、40 年以上の歴史があります。今回のような宿泊を伴う例会も実施されており、今回は名城大学から比較的近い(といっても車で 3 時間かかりますが…)岐阜で開催されるとの連絡をいただきましたので、参加を希望する学生を募って行って参りました。当研究室では水生昆虫をテーマとした研究を行う体制を整えつつあり、現在 2 名の学生が水生昆虫(カワゲラ、水生半翅)を扱っています。今回はカワゲラの 1 名にこれまでの卒業研究の内容を発表してもらいました;学外での発表の機会は初めてであり、本人は言うまでもなく武藤も大いに緊張しましたが、しっかりと発表をやり遂げ、実に多くのサジェスチョンをいただくことができました。また、発表後の夕食や懇親会、さらには懇親会と並行して自然発生的に始まった屋外でのカワゲラのサンプリング活動の機会を通して、職業研究者の方から市民研究者、水生昆虫を主要な対象とした生物調査に携わる方々や、(国外の方を含む)他大学の学生の皆様とさまざまな観点からの交流する機会を得ることができました。翌日の演習林内でのエクスカーションでも、カワゲラをはじめ、演習林内のいろいろな動植物を観察・サンプリングを通して、いろいろな学びを得られたことと思います。なお、武藤は密かにあこがれていたツチアケビを目の当たりにして大満足でした(赤いバナナのようでなんともおいしそうにみえるのですが、実際はものすごく苦いそうです)。

研究室からのお知らせ

一部の内容(空色の文字)には外部リンクを設定していますので、ぜひご覧ください!

【2024 年度】
11/10-14:名古屋国際センターで開催されている「全国キャラバン3QUESTIONS 東海地区編」に武藤助教が出展しています。
10/26:附属農場で開催された収穫祭に、学部 3 年生 2 名、上船教授、武藤助教が参加しました。
9/22-23:岐阜大学位山演習林(下呂市)で開催された水生昆虫談話会第 508 回例会に学部 4 年生 4 名(オンライン参加 1 名を含む)、武藤助教が参加し、学部 4 年生 1 名が口頭発表を行いました。
9/18:春日井市の生涯学習事業「名城大学連携講座「アグリサイエンス講座-農と生物のチカラ-」(名城大学農学部附属農場で 4-9 月にかけて 6 回開催)において、上船教授が「天敵を用いた害虫防除」と題した講義を行いました。
9/12:中日新聞に掲載された「本社格納庫で奇妙な虫発見…正体は? Xで情報集まる、専門家もほぼ断定」で、武藤助教が解説をしました。
8/25-30:京都国際会館で第 27 回国際昆虫学会議(ICE2024KYOTO)が開催されました。昆虫学研究室からは武藤助教が参加し、カワゲラ目の発生学的研究に関する口頭発表を行いました。
8/3-4:天白キャンパスでオープンキャンパスが行われ、昆虫学研究室ではオープンラボを通して多くの来場者に研究紹介を行いました。また、武藤助教が「なんと素晴らしい昆虫たち!その繁栄の秘密とは」と題した模擬講義を実施しました。
6/15:附属農場で開催された田植祭に、学部 3 年生 2 名、上船教授、武藤助教が参加しました。
6/14:当研究室所属の 3 年生(安田さん)の活動が学生紹介サイトで紹介されました。
6/1:武藤助教が兵庫県たつの市で開催された第 22 回カワゲラ懇談会に参加し、「ニュージーランドで出会ったカワゲラたち」というタイトルで話題提供を行いました。
5/22:現在、愛知県内で果樹を加害するカメムシ類が多く発生しています。このことについて、上船教授が同日放送の NHK 名古屋放送局「まるっと!」で解説しました
5/17-18:武藤助教が菅平高原(長野県上田市)で開催された第 60 回日本節足動物発生学会大会で第 3 回日本節足動物発生学会奨励賞「安藤裕賞」を受賞し、「カワゲラ目および原始的な昆虫類の比較発生学的研究」と題した受賞講演を行いました。
4/1:今年度は学部生 3 年生 21 名、4 年生 16 名、修士 1 年 4 名、2 年 2 名の体制で 1 年間動いていきます。

【2023 年度】
3/28-31:仙台国際センターで行われた日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会合同大会で、学部 4 年生 4 名、大学院生 2 名がポスター発表を、武藤助教が口頭発表を行い、研究成果を発表しました。
3/18:学位記授与式が挙行されました。学部 4 年生 16 名が当研究室を卒業します。新天地での活躍を期待しています。
2/10:農学部卒業研究発表会が開催され、学部 4 年生 16 名が 1 年間の研究成果を発表しました。
12/15:名城大学で行われた愛知県農学系 4 機関研究会に大学院生が2名参加し、研究成果を発表しました。
11/25:武藤助教が筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所で行われた第42回菅平動物学セミナーに参加し、研究成果を発表いたしました。
11/24:武藤助教が中部経済新聞 「オープンカレッジ」にて「物陰に潜む銀鱗の昆虫・シミ 昆虫類の進化、消化管から考察」と題したコラムを寄稿しました。
6/30-7/1:武藤助教が裏磐梯(福島大学)で行われた第 59 回日本節足動物発生学会大会に参加し、研究成果を発表いたしました。
6/17:上船教授が天白区連携講座「親子で楽しい理科学教室」で「知ってみよう 植物と昆虫の香りの世界~植物の気持ちになってみよう~」と題した講座を担当しました。
4/3:武藤助教が着任しました。

<上船教授の近況>
長い時間研究室にこもり実験データーの分析などを行っていますが、時々、専攻生と卒業研究の進め方や実験結果の分析方法について何時間も熱心に議論を続けるため、気が付けば飯抜きのこともあります。主に昆虫の視点から研究を行っていますが、植物がどのように害虫から身を守っているのか植物からの視点でも研究を進めています。学部内で統計処理に詳しいため、他の研究室の学生も相談に来てくれます。分析後に、統計結果を受けて何が言えるのか学生と議論するのが楽しいです。

<武藤助教の近況>
昆虫類の系統進化に興味があり、比較発生学・比較形態学を専門として研究に取り組んでいます。これまではカワゲラやシミといった昆虫類を対象としてきましたが、半翅系昆虫(ハジラミ、キジラミなど)にも興味があります。また、カワゲラ・シミ・イシノミを対象とした自然史研究(分類学・配偶行動・生活史)や、東海地方の無翅昆虫類相・水生昆虫相の解明といったテーマにも取り組んでいきたいと考えています。よろしくお願い申し上げます。

<卒業研究のテーマ>
テーマ1:捕食性カメムシの代替餌の探索
テーマ2:植物の香りを用いた害虫防除法の開発
テーマ3:植物ホルモン様物質を用いた害虫防除法の開発
テーマ4:寄生蜂の視覚利用に関する研究
テーマ5:ゼニゴケと植食者の相互作用に関する研究
テーマ6:ヒメカメノコテントウの交尾行動に関する研究
テーマ7:植物間コミュニケーションに関する研究
テーマ8:植食者の植物の防衛に対する対策
テーマ9:2次植物(ソバ)を用いた天敵保護に関する研究
テーマ10:特定外来生物クビアカツヤカミキリに関する研究
テーマ11:水生半翅類の比較発生学的研究
テーマ12:カワゲラ目の生殖巣の発生学的研究を見据えた幼虫飼育法の確立
テーマ13:マダラシミの後胚発生過程に関する研究
テーマ14:名古屋市および半田市の土壌動物相に関する研究

最近の主な論文・著書

Mtow S, Machida R (2024) What are Halomachilis akkesiensis and Halomachilis kojimai described from Hokkaido, Japan? (Insecta: Archaeognatha: Machilidae). Zootaxa, accepted.

武藤 将道 (2024) ミナミカワゲラ亜目5種のカワゲラ類の卵構造(昆虫綱・カワゲラ目・ミナミカワゲラ亜目). 名城大学農学部学術報告,60:53-63.

Mtow S, Tsutsumi T, Masumoto M, Machida R (2023) Revisiting the formation of midgut epithelium in Zygentoma (Insecta) from a developmental study of the firebrat Thermobia domestica (Packard, 1873) (Lepismatidae) . Arthropod Structure & Development, 73: 101237.

Mtow S, Tsutsumi T (2022) Body pigmentation during embryogenesis first found in stoneflies: a case of Megaperlodes niger Yokoyama, Isobe & Yamamoto, 1990 (Insecta, Plecoptera, Perlodidae). Fragmenta Entomologica, 54: 273-278.

Koeduka T, Takaishi M, Suzuki M, Nishihama R, Kohchi T, Uefune M, Matsui K (2022) CRISPR/Cas9-mediated disruption of ALLENE OXIDE SYNTHASE results in defective 12-oxo-phytodienoic acid accumulation and reduced defense against spider mite (Tetranychus urticae) in liverwort (Marchantia polymorpha) . Plant Biotechnology, 39: 191-194.

武藤 将道, 吉井 重幸, 塘 忠顕 (2022) 福島県で最近発見された外来カミキリApriona swainsoni swainsoni (Hope, 1840) (コウチュウ目・カミキリムシ科・フトカミキリ亜科) の分布,食害および後食に関する予備的な報告. 昆蟲 (ニューシリーズ), 25: 18-24.

Mtow S, Smith BJ (2022) Notes on the emergence of a stonefly, Stenoperla prasina (Newman, 1845) in New Zealand (Plecoptera: Eustheniidae). Entomologist's Monthly Magazine, 158: 67-71.

Yoshida K, Uefune M, Ozawa R, Abe H, Okemoto Y, Yoneya K, Takabayashi J (2021) Effects of prohydrojasmon on the number of infesting herbivores and biomass of field-grown Japanese radish plants. Frontiers in Plant Science, 12: 695701.

Uefune M, Yoneya K, Yamamoto M, Takabayashi J (2021) The use of synthetic herbivory-induced plant volatiles that attract specialist parasitoid wasps, Cotesia vestalis, for controlling the incidence of diamondback moth larvae in open agricultural fields. Frontiers in Ecology and Evolution, 9: 702314.

Mtow S (2021) A new record of Petrobiellus takunagae Silvestri, 1943 (Archaeognatha, Machilidae, Petrobiellinae) from Sado Island, Niigata Prefecture, Japan. Japanese Journal of Entomology (New Series), 24: 108-110.

Mtow S, Tsutsumi T (2021) First instar nymphs of two peltoperlid stoneflies (Insecta, Plecoptera, Peltoperlidae). Deutsche Entomologische Zeitschrift, 68: 179-188.

Mtow S, Machida R (2021) Thickened srosa and serosal cuticle formed beneath the embryo in eight arctoperlarian stoneflies (Insecta, Plecoptera). Proceedings of the Arthropodan Embryological Society of Japan, 53: 9-13.

Mtow S, Smith BJ, Machida R (2021) Egg structure of five antarctoperlarian stoneflies (Insecta: Plecoptera, Antarctoperlaria). Arthropod Structure & Development, 60: 101011.

Uefune M, Abe J, Shiojiri K, Urano S, Nagasaka K, Takabayashi J (2020) Targeting diamondback moth in greenhouses by attracting specific native parasitoids with herbivory-induced plant volatiles. Royal Society Open Science, 7: 201592.

Abe J, Uefune M, Yoneya K, Shiojiri K, Takabayashi J (2019) Synchronous Occurrences of the Diamondback Moth (Lepidoptera: Plutellidae) and its Parasitoid Wasp Cotesia vestalis (Hymenoptera: Braconidae) in Greenhouses in a Satoyama Area. Environmental Entomology, 49: 10-14.

Mtow S, Machida R (2019) Note on the thickened serosa and serosal cuticle formed beneath the embryo in Scopura montana Maruyama, 1987 (Insecta, Plecoptera, Scopuridae). Proceedings of the Arthropodan Embryological Society of Japan, 52: 11-14.

Mtow S, Machida R (2018) Development and ultrastructure of the thickened serosa and serosal cuticle formed beneath the embryo in the stonefly Scopura montana Maruyama, 1987 (Insecta, Plecoptera, Scopuridae). Arthropod Structure & Development, 47: 643-654.

Takai H, Ozawa R, Takabayashi J, Fujii S, Arai K,Ichiki RT, Koeduka T, Dohra H, Ohnishi T, Taketazu S, Kobayashi J, Kainoh Y, Nakamura S, Fujii T, Ishikawa Y, Kiuchi T, Katsuma S, Uefune M, Shimada T, Matsui K (2018) Silkworms suppress the release of green leaf volatiles by mulberry leaves with an enzyme from their spinnerets. Scientific reports, 8: 11942

Ozawa R, Ohara Y, Shiojiri K, Uchida T, Kakibuchi K, Kugimiya S, Uefune M, Takabayashi J (2018) Uninfested plants and honey enhance the attractiveness of a volatile blend to a parasitoid Cotesia vestalis. Journal of Applied Entomology, 142: 978-984

Rim H, Uefune M, Ozawa R, Takabayashi J (2018) An omnivorous arthropod, Nesidiocoris tenuis, induces genderspecific plant volatiles to which conspecific males and females respond differently. Arthropod-Plant Interactions, 12: 495-503

Yoneya K, Uefune M, Takabayshi J (2018) Parasitoid wasps’ exposure to host‑infested plant volatiles affects their olfactory cognition of host‑infested plants. Animal Cognition, 21: 79-86

Mtow S, Machida R (2018) Egg structure and embryonic development of arctoperlarian stoneflies: a comparative embryological study (Plecoptera). Arthropod Systematics & Phylogeny, 76: 65-86.
Update :

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