応用生物化学科

栄養・食品学研究室

Laboratory of Nutrition and Food Science

食品素材に含まれる
『生理活性成分』の
体の中での働きを探る

湊健一郎 教授湊健一郎 教授

近澤未歩 助教近澤未歩 助教

研究内容

  現在,ガンやメタボリック症候群などの様々な生活習慣病の予防や治療において,マクロファージを標的とした薬剤・治療法の開発が進んでいる。T細胞のようにマクロファージにも,異なる機能を有する亜群が存在することが明らかとなってきており,それらの分化をコントロールすることが疾病予防につながることが期待されている。細菌やウイルス感染により分化して,それらを排除するために局所に流入してくるマクロファージはM1マクロファージと呼ばれる。また,Th2細胞やマスト細胞などが産生したIL-4やIL-13により活性化されたものはM2マクロファージと呼ばれ,寄生虫感染からの防御や免疫抑制作用を示す。さらには,動脈硬化の発症にはCXCL4分泌型M4マクロファージへの分化が関与しており,その抑制が治療には有効であることも提唱されている。
 本研究室ではこれまでに,食品中多糖類(主にβグルカン)のヒト免疫系細胞(単球・マクロファージや樹状細胞)に対する,賦活化作用や分化調節作用を精力的に調べてきた。当初は,これらβグルカンは総じてM1マクロファージへの分化・活性化に大きく寄与しているという結果を示していた。しかし,最近ヒト末梢血単核球を用いたマクロファージ分化実験において,未分化の単核球の段階で短時間の多糖刺激をおこなうと,M2マクロファージへの分化が誘導されたのである(Minato et al., 2018)。さらに予備的な試験においても,M2マクロファージへの分化を誘導するβグルカンの存在が示唆された(湊,日本応用糖質科学会第42回近畿支部会,2016)。さらに,これらβグルカンは,単核球上のTLRやDectin-1など複数のレセプターによって認識されていることも明らかにした(Minato et al., 2016)。このように今までとは異なる知見が得られたため,細胞の多糖認識には,いくつかの異なるスイッチ(レセプター)があり,上記のような現象,つまりβグルカンの種類が異なると,マクロファージ分化においてこれらスイッチのオン・オフが調節されて,異なるマクロファージサブセットへの分化が誘導されるのではないかと考えており,現在主に,
―マクロファージ分化の制御は可能か?―
という研究テーマで,機能性多糖を中心に据えて,その他食品因子についてもマクロファージを標的とした生理活性を調べている。

 その他食品因子についての研究テーマは上図をクリックしてご参照ください。

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最近の主な論文・著書

(1) Minato, K., Laan, L., van Die, I. and Mizuno, M., Pleurotus citrinopileatus polysaccharide stimulates anti-inflammatory properties during monocyte-to-macrophage differentiation, Int. J. Biol. Macromole., 122, 705-712; 2019
(2) Minato, K., Mizuno, M., Chapter 3. Mushrooms and Their Effects on the Prevention and Cure of Inflammation, in Medicinal Mushrooms: Cultivation, Properties and Role in Health and Disease, ed. Cruz, D., 2018, ISBN 978-1-53614-592-2
(3) 水野雅史,湊健一郎,βグルカン受容体を介した抗炎症効果,βグルカンの基礎研究と応用・利用の動向,pp. 96-102, 大野尚仁監修,CMC出版,2018, ISBN978-4-7813-1340-5
(4) Mizuno, M., Sakane, I., Minato, K., Watanabe, J. and Hashimoto, T., Hot water extract of Grifola gargal possesses anti-inflammatory activity, Food Sci. Technol. Res., 23(5), 725-732, 2017
(5) Minato K., Ohara A. and Mizuno M., A pro-inflammatory effect of the ß-glucan from Pleurotus cornucopiae mushroom on macrophage action, Mediators of Inflammation, 2017, DOI: 10.1155/2017/8402405, 2017
(6) Minato K., Laan L., Ohara A., van Die I., Pleurotus citrinopileatus polysaccharide induces activation of human dendritic cells through multiple pathways, Int. Immunopharmacol., 40, 156-163, 2016
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