名城大学農学部 生物資源学科 作物学研究室 名城大学農学部 生物資源学科 作物学研究室

水田における稲わら由来のバイオメタン生産と水稲栽培の二毛作を達成する新奇農業システムの確立

研究の背景

 水稲栽培後の水田では,コメ収穫後に稲わらが大量に発生します.稲わらは農業廃棄物のひとつですが,見方を変えると貴重なバイオマス資源であると言えます.しかし,日本で発生する年間800万トン以上の稲わらのうち,飼料として利用されているのは10%ほどで,残りのほとんどは未利用のままです.ただ,未利用の稲わらは休閑期に水田に鋤き込まれるので,土壌有機物として還元され,土壌の肥沃度を保つためのバイオマス資源として循環的に利用されていると考えられます.ところが,翌年度に水稲栽培を行うために水田に水を張ると,土壌環境が嫌気的になり,還元化が進みます.すると,土壌に鋤き込まれていた稲わらが土壌微生物の働きで嫌気的に分解され,温室効果が二酸化炭素の約25倍と言われている「メタン」が大量に発生します.よって,世界の水稲栽培地域では,地球温暖化対策のため,水田から発生するメタンをできるだけ削減するような水稲栽培技術の確立を目指して研究が進められています.

研究の目的

 上記の背景に対して私たちは発想を転換して,水田から大量に発生する稲わら由来のメタンを高効率で回収し,それを地産地消の再生可能エネルギーとして農業現場で活用することができないかと考えました.もしその技術が確立されれば,温室効果ガスのメタンの水田からの放出量を削減することができ,さらに水田が食料生産だけでなくエネルギー生産の場にもなり得ます.私たちは,本技術を「GETシステム」と名付け,既存のメタンガス化施設のようなインフラの整備が必要ない,水田という環境を活かした低コストエネルギー生産技術として確立することを目指しています.

研究内容と成果

 GETシステムを確立するため,名城大学農学部の「環境微生物学研究室」「環境土壌学研究室」「フィールドサイエンス研究室」「生物物理化学研究室」とともに,名城大学附属農場においてメタンの効率的な生産・回収技術のための実証試験,およびメタン生産後の水田における水稲の生育に及ぼす影響の解析を実施しています.現在,水田に畝を作成し,その畝に裁断した稲わらを大量に投入してシートで覆い,湛水することで,施用した稲わら1kgあたり約300リットルのバイオガス(メタン濃度;約60%)の回収に成功しています.また,冬期にメタン生産を行った後の水田で水稲栽培を実施し,冬期湛水と稲わら残渣による水稲に対する肥料効果が確認できました.ただし,今後も継続的な試験が必要であると考えています.

GETシステム

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