樹木と菌根菌感染の関係
森林は水田や畑と異なり、肥料を撒くことがないため、農耕地に比べて貧栄養となっています。菌根菌は樹木に感染し、土壌中の養分を樹木に渡す一方で、光合成産物を樹木から得て生育する共生関係を築いています。私たちは、樹木と菌根菌感染の関係について調べています。
土壌を植物生産と物質循環の両面から捉え、両者を関係づける研究を行っています。
最近の学術論文 | |
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著書・特許など | |
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ISBN: ISBN:978-4-254-43129-2 C3561 ISBN: 978-4-7813-1621-5 |
受賞・表彰 | |
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2023 日本土壌肥料学雑誌論文賞 2023 第40回農薬環境科学研究会 永田万由さん ポスター賞 2022 第39回農薬環境科学研究会 野々垣ほのかさん ポスター賞 |
土壌は植物(作物)に養分を供給し、生育環境を整えることで食糧生産を支えています。本研究室では農耕地に加えて自然生態系の未知の部分に挑戦しています。
例えば、劣悪な土壌環境でも植物の生育を可能にする共生菌に焦点を当て、土壌-植物間の共生的生存機構と元素循環の解明に取り組んでいます。
森林は水田や畑と異なり、肥料を撒くことがないため、農耕地に比べて貧栄養となっています。菌根菌は樹木に感染し、土壌中の養分を樹木に渡す一方で、光合成産物を樹木から得て生育する共生関係を築いています。私たちは、樹木と菌根菌感染の関係について調べています。
アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は、多くの植物に共生しリンを供給し、根粒菌はマメ科植物に共生し窒素を供給していますが、植物の種類(科・属・種の違い)によって感染する種類や植物の生育に対する影響が異なることが、最近の研究でわかってきました。
私たちは、感染したAM菌・根粒菌の種類の自然栽培への貢献を調べています。
土壌には無機・有機の様々な物質の複合体です。炭素・窒素・硫黄などで構成される土壌中の物質(腐植、アンモニアや硝酸など)の動態を調べることは、生態系や農耕地の物質の循環を知るうえで重要です。
例えば、マメ科植物は、土壌中の窒素と共生する根粒菌が大気中の窒素を固定したものの両方を使っています。私たちは、マメ科植物に取り込まれた窒素の土壌・大気由来の比率を、窒素の安定同位体比(δ15N)を用いて調べる手法の開発に取り組んでいます。
土壌が植物に養分を供給できるのは、養分を保持する能力があるからです。裏を返せば土壌は汚染物質も保持します。土壌中での有機・無機化学物質の動態と植物による吸収の関係を調べ、食の安全や化学物質の環境動態の解明に貢献すべく研究を進めています。
大気や水系(河川、湖沼や海洋)と異なり、土壌は化学物質を吸着するため、その挙動は複雑です。
私たちは、汚染土壌の修復や生物による汚染物質の土壌からの取り込み経路の解明を目的として、無機・有機化学物質の土壌中での動態と植物による吸収について調べています。