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名城大学 環境土壌学研究室 研究内容

当研究室では土壌を植物生産と物質循環の両面からとらえ、かつ両者を関係づける研究を行っています。

最近の学術論文
  1. 村野宏達(2018)土壌有機物の環境科学的側面:土壌収着に果たす役割、ペドロジスト、62(2):32-37.
  2. Murano, H. et al.(2018)Influence of humic substances and iron and aluminum ions on the sorption of acetamiprid to an arable soil. Sci. Total Environ., 615:1478-1484.
  3. 礒井俊行ら(2017)ダイズ根粒の重窒素自然存在比の推移―自然栽培圃場における窒素固定寄与度の推定に向けて―、名城大総研紀要、22:149-152.

  4. 全ての学術論文

受賞・表彰
    2018

    日本農薬学会第36回農薬環境科学研究会 中島聡美さん(学部4年)ポスター賞

    2017

    日本農薬学会第35回農薬環境科学・第37回農薬製剤・施用法 合同シンポジウム 織井志帆さん(学部4年)ポスター賞

    2015

    日本農薬学会 第38回農薬残留分析研究会・第33回農薬環境科学研究会 合同研究会 宇井直斗さん(学部4年)ポスター賞敢闘賞

土壌-植物間の共生的生存機構と元素循環の解明

土壌は植物(作物)が必要とする養分を供給し、植物の生育環境を整えることによって私たちが必要とする食糧生産を支えています。この植物生産を支える部分について、研究室では農耕地に加えて自然生態系の未知の部分に挑戦しています。例えば、劣悪な土壌環境でも生育できる植物があり、それを可能にしていると考えられる菌根菌や根粒菌などに焦点をあてながら、その土壌-植物間の共生的生存機構と元素循環の解明を、生理・生化学的手法と分子生物学的手法を組み合わせて行っています。

樹木と菌根菌感染の関係

菌根菌は樹木に感染し、土壌中の養分を樹木に渡す一方で、光合成産物を樹木から得て生育する共生関係を築いています。私たちは、樹木と菌根菌感染の関係について調べています。

例えば、スギは成長段階(樹齢)によって養分の要求性が異なることがわかっています。森林は水田や畑と異なり、肥料を撒くことがないため、農耕地に比べて貧栄養となっています。また、木本類(樹木)は草本類(草)に比べて、生育する年数が長いため、樹木の生育に必要な養分は、森林生態系の中である程度循環していると考えられます。このような森林生態系において、樹木の生育に菌根菌が果たす役割は重要なものだと考えられます。

私たちは、森林の年齢である林齢ごとのスギの養分要求性と菌根菌感染の関係に着目して研究を進めています。

水田転換畑ダイズのアーバスキュラー菌根菌の多様性

日本のダイズ畑の約8割は、もとは水田だったものの転換畑で栽培されています。しかし、それらの畑でのダイズの生育は悪く、収量が低いことが指摘されています。

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は、イネやダイズと共生していますが、植物の種類によって感染する種類が異なる宿主特異性がある程度あることが、最近の研究でわかってきました。また、AM菌が感染した植物は、感染していない植物よりも土壌中のリンの吸収が高くなることや、その種類によって植物のリンの吸収に与える影響が異なることが知られています。

私たちは、イネ―ダイズの作付け体系(連作・輪作)が、感染するAM菌の種類やダイズの生育にどのような影響を与えるかを調べています。

水田の管理体系が物質循環・生産に与える影響

水田は通常、収穫後から田植まで、土壌を乾燥させます。しかし、近年、収穫後の水田に再び水を入れる「ふゆみずたんぼ」(冬期湛水水田)が生物多様性を目的として、国内外で行われています。実際に、絶滅危惧植物の出現や水生生物の産卵場所の提供などが見られています。しかし、冬期湛水による影響は生物多様性だけではありません。

例えば、冬期湛水によって土壌への大気からの酸素の供給が水によって妨げられ、土壌中の微生物の呼吸によって土壌中の酸素が消費されます。このため、土壌は酸素の少ない嫌気状態が長期化します。これにより、メタン生成菌などの嫌気呼吸により温暖化ガスであるメタンガスが発生することが知られています。また、土壌養分の動態が通常の管理体系(田植までの乾燥)と異なる可能性があります。

私たちはこのような水田管理による環境面・生産面の影響を調べています。

安定同位体などを用いた土壌中の物質循環の把握

土壌には無機・有機の様々な物質が複雑に絡み合って存在しています。炭素・窒素・硫黄などにより構成される土壌中の物質(腐植、アンモニアや硝酸など)の動態を調べることは、生態系や農耕地における物質の循環がどのようになっているかを知るうえで重要です。

例えば、マメ科植物には根粒菌が感染していて、生育に必要な窒素を、自身の根を使って土壌から吸収したものと感染している根粒菌が大気中の窒素から固定したものの両方から得ています。マメ科植物に取り込まれた窒素の土壌・大気由来の比率を、窒素の安定同位体比(δ15N)を調べることにより知ることができます。

このように私たちは、安定同位体比の測定などにより、土壌を中心とした生態系・農耕地の物質循環を調べています。

食の安全や化学物質の環境動態の解明

土壌が植物に養分を供給できるのは、土壌が養分を保持する能力を有していることによります。裏を返せば土壌は汚染物質を保持する能力を持っていることになります。この土壌中での有機・無機化学物質の動態と植物によるそれら化学物質の吸収を調べ、食の安全や化学物質の環境動態の解明に貢献すべく研究を進めています。

土壌中における無機・有機化学物質の動態

環境中での汚染物質の動態を把握することは、私たちの健康や、生態系の保全にとって重要なことです。大気や水系(河川、湖沼や海洋)と異なり、土壌はそれらの化学物質を吸着するため、その挙動は複雑なものになります。

私たちは、汚染土壌の修復や生物による汚染物質の土壌からの取り込み経路の解明などに貢献することを目的として、GC-IRMS、原子吸光光度計、LC/MS/MSやGC/MSなどを用いて無機・有機化学物質の土壌中での動態と植物による吸収について調べています。