研究概要
微生物による環境浄化(油分解,塩素化化合物)
油を含む汚泥の微生物浄化とバイオリファイナリー
土壌や海水が油(重油やガソリンなど)で汚染され,そこに生息する生物の生存に悪影響を及ぼしていることはよく知られていることです.本研究室では,製鉄会社との共同研究として製鉄過程で発生する含油産業廃棄物(含油スラッジ)を対象として,①油を分解する細菌による浄化(微生物を利用したバイオレメディエーション),と②産業廃棄物からの鉄回収(微生物を利用したバイオリサイクル),および③微生物(メタン生成アーキア)による産業廃棄物からのメタンガス生成(微生物を利用したバイオリファイナリー)による環境調和型物質循環社会の構築を目指しています.この研究により化石燃料に替わるエネルギーあるいはメタノールの原料として期待されるメタンガスを廃棄物から回収することで,油の浄化,鉄回収およびエネルギー回収が期待できます.現在は,油の分解細菌の探索,メタン生成アーキアの活性化条件の検討,メタン資化性細菌の抑制条件の検討などを行っています.また,これまでに圧延油を分解することができる細菌を単離し,多孔質担体(鉄鋼スラグ)へ固定化して,含油廃棄物を浄化するための研究なども行っています.
有機塩素化合物(ジクロロメタンとトリクロロエチレン)の微生物分解
有機塩素化合物(塩素化エテンおよびエタン類)は,一般的に人体に有害とされている化学物質です.これらは産業における洗浄剤など多用途で使用されています.天然にこれらの化合物が存在することはまれですが,種々の産業で使用される際に土壌や地下水に漏洩し,環境を汚染することがあります.そのため,これらの化合物で環境を汚した場合は法律で浄化することが義務づけられています.そこで,本研究室では地球環境に負荷をかけない浄化方法として微生物を利用した分解(脱塩素化)を実用化するための研究を行っています.具体的には,新しい脱塩素化細菌の探索や脱塩素化細菌の活性化を助ける浄化剤の性能評価などです.その成果は,油脂会社および大手ゼネコンとの共同開発で特許化することができました.現在は,浄化剤をさらに効果的に利用できる研究を行っています.