Department Of Environmental Bioscience Meijo University, Japan

研究概要

光合成を利用した二酸化炭素の利活用

遺伝子組換えシアノバクテリアによる二酸化炭素からのエチレン生成

 現代社会はエネルギーの大量消費によって支えられており,世界でのエネルギー消費量は石油換算で年間約100 億トンと言われています.日本におけるエネルギー消費量は1997年で石油換算5億トン,世界4位の大量消費国と言えます.この消費される一次エネルギーの90%は化石燃料で占められており,そのうち石油は一次エネルギー供給量の40%と大きな比率を占めています.しかしながら石油をはじめとする化石燃料は本来貴重な有限資源であるため,使い続ければ枯渇するのは明らかです.さらに,化石燃料の燃焼によって地球温暖化の原因となる二酸化炭素が大量に生成されるため,近年その代替エネルギー開発の必要性が認識され,脱石油および二酸化炭素の削減を目的とした循環型社会の構築は急務です.また,石油や天然ガスの水蒸気分解によって大量に生産される工業原料の一つにエチレンがあります.エチレンはプラスチック等の様々な工業用化学製品を製造するための基本物質として極めて重要な工業用原料ガスです.エチレンは植物によって生合成されることが古くから知られており,植物におけるエチレン生合成は2段階の反応で行われます.その反応は,第1段階に1-アミノシクロプロパン-l-カルボン酸(ACC)合成酵素の触媒作用によるS-アデノシルメチオニン(AdoMet)から1-アミノシクロプロパン-l-カルボン酸(ACC)への転換と,第2段階であるACC 酸化酵素の触媒作用によりACC からエチレンへの変換です.こうして植物体内で生成されるエチレンはいくつかの生理的プロセス,例えば果物の熟成を促進させるなど植物老化に関与している植物ホルモンとして作用します.植物だけでなく微生物でもエチレンを生合成できることが知られており,その合成には2-オキソグルタル酸由来と2-オキソ-4-メチルチオ酪酸由来の2つの経路が存在します.近年,石油代替のバイオエネルギー創成を目的とした研究開発が盛んに行われており,その中には微生物由来のエチレン合成系を利用したバイオエチレンの生産といった微生物によるバイオ燃料生産技術の開発などがあります.

 本研究室では,藻類が持つ二酸化炭素固定能に着目し,酸素発生型光合成細菌であるシアノバクテリアに植物由来のエチレン合成遺伝子を導入し,二酸化炭素からエチレンを生産させる技術の開発を試みています.具体的には,生体内でのバイオ燃料の生産効率を高めるための技術として,セルロース分解性嫌気性菌がもつ酵素複合体・セルロソームを応用した人工酵素複合体を構築しました.このセルロソームはイスラエルの研究グループにより著しく解明が進められ,その構造はセルラーゼなどの酵素群から成る触媒領域と、酵素の集合を担うコヘシンと呼ばれる結合領域が多数連なった軸タンパク質(コヘシン)から構成されています.各酵素にはドックリンと呼ばれるコヘシンとの結合部位が存在しており,これが軸タンパク質のコヘシンと結合することによって様々な酵素が空間的に集合し,効率的に触媒反応が進みます.このコヘシンードックリン結合は厳密な結合特異性と高い結合親和性をもつことが明らかにされており,結合特異性の異なるコヘシンを連結させたキメラ骨格タンパク質を構築することで人工的に配列制御した酵素複合体を作製することが可能となります.このセルロソームを利用することで,トマト(Solanum lycopersicum)由来のACC 合成酵素及びACC 酸化酵素をキメラ骨格タンパク質(配列制御タンパク質)上に配向させたエチレン合成人工酵素複合体(図)を構築し,一連の逐次反応を効率化させることができました.

エチレン目的
図1.細菌によるトリクロロエチレンの脱塩素化
エチレン生合成1
図2.脱塩素化細菌の遺伝子による定量
エチレン生合成2
図3.人工酵素複合体の概要
図4.本研究のエチレン合成人工酵素複合体
図5.遺伝子組換えシアノバクテリアの培養
 
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